●この発見から10年以上かかり,エルンスト・ボリス・チェーンやハワード・フローリーらがアメリカでペニシリンの実用化に成功した.ここから,ペニシリン系薬をはじめとする抗菌薬の開発と,細菌の耐性化のいたちごっこが始まった.●これらのスペクトルは開発時のもの(獲得耐性がないもの)である.抗菌薬の使用に伴う耐性菌の増加や,より強い抗菌活性をもつ抗菌薬の開発などにより,現在では使用される目的が異なっている場合がある.現在の使用目的については,各薬剤のページを参照のこと.感染症と薬細胞壁合成阻害薬●アオカビが産生する抗生物質が細菌の繁殖を抑えていることを確認し,ペニシリンと名づけた.薬剤師●休暇から戻ってきた際に,アオカビの周囲には細菌が繁殖しないことを発見した.●ブドウ球菌を培養する際にアオカビ(ペニシリウム属)が混入したが,それに気づかず休暇を取った.β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤〔p.148〕Pharmacology vol.3 : An Illustrated Reference Guide略語●6-アミノペニシラン酸(6-APA):6-aminopenicillanic acid+αもっとわかる141ただいま〜…あっ!!!培地が!!!アオカビの周りを菌が避けている!もしかして…抗生物質として世界で初めて発見されたのはペニシリンですが,ヒトに対する世界初の抗菌薬は梅毒に対するサルバルサン(1910年頃)です.実は,サルバルサンの開発には日本人も関わっています.大まかなスペクトルの広がり(イメージ)グラム陽性菌グラム陰性菌嫌気性菌表のように,開発されるに従ってスペクトルは広がっていきました.なお,スペクトルの広がり≠抗菌活性の強さという点には注意しましょう〔p.130〕. アオカビが産生する抗生物質 ペニシリン系抗菌薬とは●ペニシリン系抗菌薬は,β-ラクタム系薬〔p.139〕の代表的な一群である.6-アミノペニシラン酸(6-APA)〔p.142〕を基本骨格にもつ.●1928年,イギリスのアレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見した. 天然ペニシリンと合成ペニシリン 分類●ペニシリンはもともと,黄色ブドウ球菌に対する抗生物質として発見された〔前項〕.このように,微生物から直接精製されるものを天然ペニシリンという.●そこから,耐性菌に対して有効となるように,また,グラム陰性菌や嫌気性菌へとスペクトルが広がるように合成ペニシリンが開発されていった.ペニシリンだ!培養抽出特殊な細菌薬剤師❶❷❸休みだー!アオカビ分類アミノペニシリン〔p.145〕抗緑膿菌ペニシリン〔p.146〕ブドウ球菌天然ペニシリンベンジルペニシリン(ペニシリンG)〔p.142〕ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン〔p.144〕合成ペニシリン広域ペニシリンペニシリン系抗菌薬
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