●がん抗原の発現を目印にして,がん細胞を細胞傷●がん細胞のMHCクラスⅠ分子の発現低下を目印にして,がん細胞をNK細胞が認識し直接攻撃する.●NK細胞はサイトカイン(IFN-γなど)を産生して免●免疫監視機構に対し,がん細胞は回避する手段をもつことで排除されずに増殖する.これを免疫逃避機構という.●この他,免疫不全や老化などによる免疫能の低下もがん発生の原因となる.略 語●全身性炎症反応症候群(SIRS):systemic infl ammatory response syndrome ●ナチュラルキラー(NK):natural killer ●ヘルパーT細胞(Th):helper T cell ●細胞傷害性T細胞(CTL):cytotoxic T-lymphocyte ●主要組織適合遺伝子複合体(MHC):major histocompatibility complex ●インターフェロン(IFN):interferon ●プログラム細胞死リガンド1(PD-L1):programmed cell death-ligand 1 ●マイクロサテライト不安定性(MSI):microsatellite instability ●腫瘍遺伝子変異量(TMB):tumor mutational burden➡Pharmacology vol.3 : An Illustrated Reference Guidewords & termsがんゲノム医療 〔p.403〕各患者の遺伝子情報に基づいて行う,個別化されたがん治療のこと.各患者の遺伝子情報はがん遺伝子パネル検査〔p.403〕などにより解析する.解析の結果,遺伝子異常を表す指標であるマイクロサテライト不安定性(MSI)や腫瘍遺伝子変異量(TMB)などが高値の場合,免疫チェックポイント阻害薬が適応となる可能性がある〔p.406〕.マイクロサテライト不安定性(MSI) 〔p.406〕DNA塩基配列の中で,1〜数塩基の短い配列が数回〜数十回反復して存在する部位をマイクロサテライトという.DNA修復機構に異常があると反復回数にばらつきが生じる.この状態をマイクロサテライト不安定性(MSI)という.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の症例では免疫チェックポイント阻害薬が有効である.なお,高頻度とは,5種類(ベセスダパネル)のマーカーを使用する場合,2ヵ所以上のマーカーがMSIを示す場合を指す.腫瘍遺伝子変異量(TMB) 〔p.406〕がん細胞に生じた遺伝子変異の量を表したもの.DNA修復機構に異常があると変異が蓄積し,TMBが高くなる(TMB-H).このような症例では免疫チェックポイント阻害薬が有効であると考えられている.?+αもっとわかる404 自己と非自己 免疫とは●免疫とは,人体(自己)にとっての異物(病原微生物やがん細胞など)を「非自己」と判定して排除するシステムである〔薬②p.318〕.●免疫が正常に働くためには,非自己を排除するために免疫反応を活性化する機能と,過剰な免疫反応を抑制し自己の細胞を攻撃(傷害)しないための免疫抑制機能が必要である.●過剰な免疫反応の例として,全身性炎症反応症候群(SIRS)〔p.97〕や自己免疫疾患〔薬②p.381〕がある. がん細胞が排除される機構 免疫監視機構●免疫細胞の連携により,変異した細胞を常に監視・排除し,がんの発生を防いでいるという考え方があり,これを免疫監視機構という.●免疫監視機構は,自然免疫による非特異的な細胞破壊と,獲得免疫による特異的な細胞破壊の2つに大別される.免疫監視機構自己判定します正常細胞薬剤師疫系を活性化する働きももつ.がんの発生がん細胞の中でも,遺伝子異常の蓄積が多いがん細胞ほど非自己と認識されやすく,免疫細胞による免疫反応が活性化します.自然免疫サイトカイン非自己を排除がん細胞病原微生物獲得免疫抗原提示排除排除がん細胞害性T細胞(CTL)が特異的に認識し攻撃する.免疫逃避による腫瘍の発生●MHCクラスⅠ分子発現の低下●がん抗原の表出低下●免疫抑制物質の産生●免疫寛容の誘導(PD-L1発現を含む)など監修医学: 吉村 清薬学: 石川 和宏免疫免疫チェックポイント阻害薬
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