●胃粘膜は常に胃酸やペプシンなどの内的刺激や,アルコールや薬剤などの外的刺激にさらされている.そのような攻撃因子から胃粘膜を保護する機能を胃粘膜防御機構という.●攻撃因子から胃粘膜を保護する防御因子として胃粘液(ムチン,重炭酸イオン),粘膜血流,プロスタグランジン(PG)〔p.46〕などが挙げられる.−)が豊富に含まれている.重炭酸イオンが胃酸を中和し,ムチンが粘膜表面●胃粘液にはムチンと重炭酸イオン(HCO3にゲル状に付着して粘膜表面に非透過層を形成することで,攻撃因子の傷害作用から粘膜上皮を保護している.●PGは胃粘液分泌促進作用と,粘膜血流増加作用,胃酸分泌抑制作用をもつ.粘膜血流の増加により細胞の分化が促進され,傷害を受けた粘膜が修復される.●攻撃因子に関わる細胞として,G細胞〔p.5〕とECL細胞がある.G細胞はガストリンを,ECL細胞はヒスタミンを分泌し,壁細胞を刺激して胃酸分泌促進を起こす.ガストリンは壁細胞の増殖作用などももつ.−など)●酸分泌抑制薬●酸中和薬(制酸薬)●消化性潰瘍の治療には,ピロリ菌の除菌を目的とした抗菌薬も使用される〔p.220〕.また,ストレス性の消化性潰瘍にスルピリド〔p.35〕を用いることがある.●この他,クローン病,ゾリンジャー・エリソン症候群,ビスホスホネートなどの薬物,門脈圧亢進症などが消化性潰瘍の発症に関与している.略語●プロスタグランジン(PG):prostaglandin ●腸クロム親和性細胞様細胞(ECL細胞):enterochromaffi n-like cell ●ガストリン分泌細胞(G細胞):gastrin-secreting cell ●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):non-steroidal anti-infl ammatory drugs ●コレシストキニン(CCK):cholecystokinin ●プロトンポンプ阻害薬(PPI):proton pump inhibitor ●カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB):potassium-competitive acid blocker ●H2受容体拮抗薬(H2RA):histamine-2 receptor antagonist/blockerPharmacology vol.3 : An Illustrated Reference Guide+αもっとわかる36PGCCK バランスを整える 攻撃因子抑制薬・防御因子増強薬●消化性潰瘍の治療においては,バランス説に基づいて,攻撃因子の抑制を目標とした攻撃因子抑制薬や,防御因子の増強を目標とした防御因子増強薬を用いる. 胃粘膜の保護や傷害の修復を行う 胃粘膜防御機構管腔側 ピロリ菌やNSAIDsによるものが多い 病因(バランス説)●通常は,胃酸やペプシンなどの攻撃因子から粘膜を保護する様々な防御因子が働いている.●消化性潰瘍は,防御因子と攻撃因子のバランスがくずれることで発生するといわれている(バランス説).●このバランスをくずす二大要因がピロリ菌とNSAIDsである.アルコール,薬剤など胃粘液(ムチン,HCO3表層粘液細胞細胞増殖(分化)⬆胃壁側粘膜血流⬆プロスタグランジン(PG)バランス説正常ゾーン粘液−HCO3粘膜血流セクレチン防御因子胃酸壁細胞ペプシノゲン(ペプシンの前駆体)主細胞胃底腺腸クロム親和性細胞様細胞(ECL細胞)潰瘍形成ゾーンピロリ菌NSAIDs胃酸ストレスペプシン喫煙攻撃因子ガストリンG細胞ヒスタミン正常ゾーン防御因子防御因子増強薬〔p.45〕●PG製剤●組織修復・粘膜保護薬:促進:抑制:攻撃因子:防御因子幽門腺潰瘍形成ゾーン攻撃因子攻撃因子抑制薬〔p.38〕■プロトンポンプ阻害薬(PPI)■カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)■H2受容体拮抗薬(H2RA)■抗コリン薬 など
元のページ ../index.html#4