診でき2
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●システムレビュー(ROS):review of systems●救急外来では,同時に多数の患者が来院,または救急車で搬送されるため,緊急度・重症度をすばやく評価し,優先順位をつけて初期対応することが重要である.●一般外来での診察で行われるような,全身を系統立てて診察をしていく方法やROS〔p.3〕の手法は,漏れなく情報を集めることが可能であり,正確な診断を導くのに有用な方法である.一方,救急外来では時間や検査の制約があるため,短時間で最低限の身体所見や情報を収集する必要がある.●救急外来では,患者が来院したらまずABCDEアプローチ〔p.101〕による生理学的徴候やバイタルサインの評価を行い,それらの異常に対して介入・処置を行って安定化を図りながら診断のためのプロセスへ進む.●患者の満足度という観点から,必要のない検査を行わなければならないときもある.また,あえて救急外来を受診してくる患者は何らかの理由があるはずである.どんなに忙しくとも患者の解釈モデルに耳を傾け,個人のナラティブ(物語)を理解しようとする姿勢が重要である.●めまいで救急搬送された患者を「頭位変換時のめまい」「頭部CTで出血性病変がない」という所見だけで良性発作性頭位めまい症と診断し,入院目的に耳鼻咽喉科にコンサルトする.●入院を引き受ける耳鼻咽喉科としては,脳梗塞の除外を客観的な検査で行ってほしいはずであり,上記に加え頭部MRIを行う.●具体的には「除外するべき疾患を,どれだけ客観的な根拠をもって除外しているか」である.●多少の経験を積んでくると「できるだけ検査をしないで診断をつけたい」「検査は悪」という考えにとらわれがちであるが,「検査前確率を考えずに(何も考えずに)検査を行う」ことが悪なのであり,診察や評価を行い,鑑別に重みづけを行ったうえで「除外の確認のための検査を行う」ことはなんら悪いことではない.救急外来で最も怖いのは,「緊急疾患を見落として帰宅させる」ことである!例×救○耳518518 まずは気道(A)・呼吸(B)・循環(C)・意識(D)の評価と安定化 救急外来での診療の基本●一般外来に比べて,救急外来では迅速な処置・治療を要する可能性の高い患者が来院する.●救急外来の目的は,❶バイタルサインの評価を行い,安定化を図る.❷帰宅可能か入院が必要かを判断する,ことで 各専門科にコンサルトすることが前提 救急外来での診療の心構え●他院ですでに診断がついており,紹介で受診・搬送される患者を除き,入院の際には専門科にコンサルトすることが前提となる.●そのため,救急外来での診療は「緊急疾患の除外」と同時に,「コンサルト先の専門科が必要とするであろう情報の収集」も重要である.ある.診断をつけることが目的ではない.医師監修小橋 大輔救急診療では限られた時間の中で病歴聴取,検査,治療を行うことが求められるため,『主要症候』章の鑑別診断リストの疾患全てを網羅した診療を行うことは現実的ではありません.そこで,本章『救急車搬送時の初期対応』では,救急外来(特に救急車搬送された患者)で重要となる鑑別疾患を挙げ,診断までの流れについて解説します.全身くまなく一般外来めまいあり耳鼻科に入院!出血なし脳梗塞は除外されている?迅速に!救急外来総論救急車搬送時の初期対応

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