●通常は,内臓痛が最初に起こり,進行するに従って体性痛や関連痛を訴えるようになる.●その他の痛みの分類には,神経痛〔p.18W〕,精神的要因などによる非器質的な痛みがある.●OPQRST各々が指す問診事項は文献により異なるが,本書では次のように定める. ?機序特徴例●内臓痛刺激が脊髄に入力される際に,隣接する皮膚からの神経線維に刺激が波及し,対応する皮膚領域に痛みが投影される〔p.24〕.●臓器周辺の壁側腹膜に炎症や刺激●腹痛とは腹部に自覚される疼痛全般を意味し,特に多い主訴の1つである.●腹痛は神経生理学的見地から,主に内臓痛,体性痛,関連痛の3つに分類され,これらの分類●腹痛の分類と,代表的な疾患の例を次に示す.●管腔臓器の筋層や漿膜が過伸展,●実質臓器の急激な腫大で被膜が伸●皮膚の一定の領域に限局している.●病巣周囲だけでなく,離れた部位にも生じうる(放散痛〔p.24〕).●触診による痛みの増強はない.●急性冠症候群に伴う心窩部・肩・腕・顎・●局在ははっきりしている.●鋭い持続痛.●振動で痛みが増悪する.●壁側腹膜の炎症(消化管穿孔や虫●局在ははっきりしない.●管腔臓器では波のある痛み(疝痛〔p.21〕),実質臓器では持続痛を認める.●悪心,冷汗などの自律神経症状を●管腔臓器の閉塞(単純性腸閉塞,●O(onset)…………………………発症様式●P(provocative/palliative)………増悪・寛解因子●Q(quality/quantity)………………症状の性質・程度●R(region/radiation)……………部位,放散痛●S(associated symptoms)………随伴症状●T(time course)…………………時間経過神経痛〔p.18〕感覚神経の障害や病変に由来する痛み.その性質は灼熱痛や電撃痛とされ,「ビリビリ」「チクチク」「ズキンと走る」などと表現される.しばしば感覚障害を伴う.18 鑑別に役立つ 腹痛の分類 腹痛の問診に役立つ 痛みのOPQRST●問診には聴取漏れを防ぐための基本的な型がいくつかある.その代表例として痛みのOPQRSTが挙げられる.特に腹は原因の推定に役立つ.内臓痛異常収縮することで生じる.展された場合にも生じる.伴うこともある.胆石症,尿管結石)痛の問診をする際に有用である.体性痛が及ぶと,体性痛が生じる.垂炎進行による腹膜炎)関連痛内臓痛を皮膚からの疼痛と間違える皮膚の痛覚を伝達する神経線維喉などの痛み内臓痛を伝達する神経線維お腹が痛い!腹痛の考え方
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